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昨今の撮影事情、、(撮影許可のことなど、その1)

不動産広告制作の中に環境写真撮影というジャンルがあります。
モデルルームや建物の撮影以外に、当該物件周辺の環境を写真で紹介するために、近隣公園や商業施設などを撮影する仕事です。

不動産のチラシなどで近隣スーパーまで○○m徒歩○分なんて、写真つきで紹介したりする程度のものから、良い公園などが近くにあるとイメージ的に撮影して「緑豊かな地に住まう」的なコピーをつけてメインビジュアルにする場合もあります。

まあ、不動産広告に限らず撮影に携わっていると、撮影許可をとらなくちゃいけないことがたびたびあります。その際、広告制作物の中に使う写真というのは雑誌などの取材撮影とは違った扱いになることも多いのです。
(雑誌の場合はどちらかというと「報道ジャーナリズム」の範疇に入るらしい)

コンプライアンスなどということが叫ばれる昨今では、昔の社会通念では通じないこともあり、厳密に言うとどんな写真でも撮影許可なしでは撮影できないという世知辛い時代になってしまいました。

良し悪しは別として、そんな昨今の撮影事情を四方山話的にいくつか紹介していきましょう。

はじめに、

撮影許可を出す側は何を根拠に規定を設けているのか?

これは、大きく分けて2つの考え方があります。撮る側から見て何を撮るのか、何処から撮るのか?の2つです。

何を撮るのか、というのは例えば人物なら肖像権やパブリシティー権があり無断で撮ったりそれを使ったりしてはいけません。、建物や建造物でも商標などが入ってくる場合は許可を取ったほうが良いでしょう。詳しいことはわかりませんが、個人情報保護法とやらが施行されてから個人、法人に限らず大きく変わった認識でしょう。撮られる被写体側の了解を得るということですね。

何処からというのは、例えば敷地内に立ち入って撮影をする場合は、その敷地の所有者あるいは管理者に立ち入りの許可をもらわなくてはいけません。路上の場合は所轄の警察署から道路使用許可をもらわなくてはいけません。こちらは撮る側の立ち位置の問題ですね。

では、もう少し具体的にみてみましょう。

その1
公園での撮影。
よく撮影などで使用される公園には、撮影に関わる規定があり前もって使用許可を取らなくてはいけません。料金が発生します。ムービーとスティールではムービー料金のほうが高く、これは立ち入るスタッフの多さとか持ち込む機材の規模からそうなっていると思います。

この場合、公園への立ち入りということを根拠に料金を取り許可を出していると思いますが、大部分の公共の公園では景観そのものに対しての権利は想定していないと思われます。

(だとすれば敷地外から公園を撮影するのは自由なはず。ただし路上で三脚など使用する場合は所轄の警察から道路使用許可がいるかも)

不動産広告用に環境写真を撮る場合、大勢のスタッフや大掛かりな機材を持ち込んで撮影をするわけではなく一人でカメラ一台首からぶら下げて公園の景観を撮影するだけなのですが、それでも許可申請を出すと同じ扱いになります。

近隣の公園ということで小さなカットで紹介する程度なら、いちいち撮影許可などもらわなくとも問題ないような気もするのですが、、、

問題は、その金額にもあります。

例えば、横浜市港北区に大倉山記念館というレトロな歴史を感じさせる建物があります。よく、コマーシャルやドラマの中でも使われたりする建物です。

この建物は大倉山公園という市が管理する公園の中にあり、その使用料金が6,300円かかります。まあ、これは一般的な金額ですね。

ところが、大倉山記念館に関しての撮影料金は一日50,000円なんで、合計56,300円かかります。

モデルを何人も連れてきて建物内外で撮影をするような場合だったら、むしろ安く済む料金設定ですが、、、

いや、ちょっと待ってください!って言いたくなりますよね。そういうことじゃなくて、こっちは小さなデジカメで外観をパシャっと数枚撮りたいだけなんだから、、、

担当者に話を聞くと雑誌などの取材で記念館を紹介してくれる場合はタダだということ。当たり前だよね。

でも、特定の企業の広告物として掲載される場合は扱い上有料になるとのこと。つまり、既存の規定にあてはめてどっちかを選択をすると商業的な撮影となり、料金規定が50,000円か0円かどちらかしかないのだから、この場合50,000円かかります、となるわけです。

このときは全額料金を支払い許可を取りましたが、メインビジュアルとして使う写真ならそのくらいの予算は当然ですが、ちょっとした小さな扱いの写真でもいちいち料金を払って撮影できるほど予算がないのが実情ではないでしょうか。

その2
東京タワーと赤レンガ倉庫

それぞれ東京と横浜のランドマーク的な建造物です。
撮影許可に関しての考え方がまったく違ってて、面白いので紹介します。
東京タワーにはライセンスという考えがあります。東京タワーが写った写真を広告物として使うときは、媒体の種類や発行部数、使われる写真の実際の大きさ(例えばA4見開きつまりA3相当の大きさでそのうち約60%が東京タワーの写真が占める、とか)、使われる期間、などによって料金が吟味されライセンス料として支払います。こうして正式にライセンスを受けた場合にはその証としてLisenced by TokyoTower というコピーが入ります。

http://www.tokyotower.co.jp/other/license.html
ここに問い合わせ用のメールフォームがあって、ここから問い合わせメールを出したところ直ぐに返信があり、対応の速さは気持ちよかったです。早速電話を入れて直接お話を伺ったのが上記の内容になります。

しかし、東京タワーって都市景観の一部として入ってきてしまうこともよくありますから、どの程度の割合で入っていると料金が発生するのかというところは微妙で、東京タワー広報との交渉しだいです。いや、問い合わせた時点で料金がかかると思ったほうがよいので、あくまで都市景観のごく一部として偶々東京タワーが写りこんだだけだ、と主張できる自信があるなら問い合わせないほうがよいかも、、、

逆に、Lisenced by TokyoTwerのコピーがないものは無許可で使っている写真ということになりますので、業界の同業者は覚えておいたほうがよいですね。だからといってチクッたり、お互い首を絞めるのはやめましょうね。

一方、横浜赤レンガ倉庫にはライセンスという考え方は無いようですが、敷地内での撮影には料金がかかります。

ですから敷地外から撮影された赤レンガ倉庫の写真は自由に使って問題ありません。

赤レンガでの撮影を管理する
横浜赤レンガ倉庫共同事業体(横浜赤レンガ倉庫1号館 管理室)
に、電話をして根掘り葉掘り聞いてみたところ、どうやらライセンスという考え方に立脚したものではないことがわかりました。

ただし、

ここからが重要です。

この赤レンガ管理室が管理している敷地は赤レンガパークだけではなく、新港パーク、運河パーク、新港中央広場、汽車道、象の鼻パークなど広大です。結局近隣からの撮影を望む場合は30,000円の料金を払うことになります。
じゃあ、少し離れたところということで大桟橋側から撮るとしましょう(このアングルも素敵です)

そうするとこんどは大桟橋に撮影料(4時間以内15,000円)を払わなくてはいけません。

横浜を象徴するランドマーク的建物ということでメインビジュアルになるならば、予算を組んでもらえばいいんですが、数ある環境写真のひとつに過ぎないのであれば、そもそもお金のかかること自体無理。

ひとつの逃げ道として管理外の公道上から撮ればどうだろう?厳密に言えばその場合でも道路使用許可は必要なのかもしれない。一瞬でも道路に立ち止まれば道路を使用したことになるというなら、走行中の車から車窓風景として撮るのはどうだ!

そもそも、こんなこと考えなきゃいけないこと自体が世知辛いよね。

あくまでも個人の感想なので、撮影許可に関してはそれぞれの責任で対応してくださいね。

撮影許可に関するネタはまだまだあります。

次回に続く、ということでよいですか?