12月16日、アップルストア銀座で「フォトグラファーとレタッチャーが語るAdobe Photoshop CS4」と題されたセミナーがあった。
発売3日前ということで席は満席、立ち見も出るほど盛況だった。
最初はアドビシステムズの日下部徳彦氏によるプレゼンテーション。
新機能をざっとおさらいする。
続いてフォトグラファー早川廣行氏によるアジテーション。
CS4がいかに凄いか、熱弁に思わず引き込まれてしまう。
そして最後はレタッチャーの片岡竜一氏がPhotoshopCS4での3D機能に関して紹介する。
Photoshop CS4 Extendedが扱う3Dは従来の2Dと3Dの垣根を越えたビジュアルのあり方を考えさせられるものだった。
早川氏はCS4を使い始めるともう前のバージョンには戻れない、と言っていた。
それはよくわかる感覚だ。
何か一つでも気にいった機能があると、前のバージョンには戻れなくなる。
CS2の時は16bit処理が増えたことと「レンズ補正」がそうだったし、今回は「Photomerge」や「レイヤーを自動整列」といった機能がそうかもしれない。
実際「Photomerge」は仕事でもすでに使っていて、デモ版の期限が切れてしまうと困る状態にすらなっている。
だが、僕が最も興味を引いたのは主催者である(株)玄光社のコマーシャルフォト編集部、川本氏の発言である。
「僕はいままで、本の中では調整レイヤーを使いましょう、という趣旨のことを書いてきたが、本当のところはよくわかってなくて、個人的にはあまり使ったことがなかった。
しかし、CS4の色調補正機能が統合されてその意味が見えてきた、、」
色調補正に関しては従来から2つのやり方があって、
一つは画面上のメニューから「イメージ」→「色調補正」を選択するやり方と、調整レイヤーを作成してパラメータを実行するやり方である。
僕もそうだが、古くからのユーザーは「イメージ」メニューから「色調補正」の中の「トーンカーブ」や「レベル補正」を選ぶのが慣れたやり方になっているのではないだろうか。
ショートカットでもコマンド+Mとかコマンド+Lといった使い勝手のほうが馴染みがある。
この場合、パラメータを設定したら必ず「O.K」をして決定をする必要があった。
例えば、「トーンカーブ」を開いて実行して、次に「色相・彩度」を実行して、など一つ一つの手順を追っていくやり方だった。
決定した時点で画質も決定しているので、何度も調整していると画質が劣化してくる。
画質を劣化させないようにするにはずーっと前の工程まで戻ってやり直さなければならなかったのだ。
つまり、静止画像でありながら、実はその生成過程ではリニアな時間軸が存在したのである。
それを解消したのが「調整レイヤー」だったのだが、今回のCS4ではよりわかりやすく統合されたウィンドウに集約した。
ここではもはや時間軸は存在せず、「O.K」ボタンを押す必要すらないのだ。
時間というものは不可逆なものであり、データの劣化も不可逆なものであった。
それをいっぺんに覆してしまったのがPhotoshop CS4だ。
哲学は写真の発明によって変わった。
それまで「我思うゆえに我あり」なんて自己と世界を規定していたものが、
いや、世界ってこうなってるよ、と圧倒的に客観的な写真の存在によって「世界観」は変わった。
さらに3Dのコンピュータグラフィックスでありえない視点で世界を見ることも出来るようになった。
テクノロジーの進化が哲学を変えてきたのである。
「写真」が世界を写すのであれば、その世界を創り出すPhotoshopの概念が変わることは新しい哲学が生まれることに他ならない。
Photoshop CS4 (V11.0) 日本語版 Macintosh版
Photoshop CS4 (V11.0) 日本語版 アップグレード版 Macintosh版