強くて弱い光

はたして、「強くて弱い光」というのは存在するのだろうか?

これは光量としては非常に弱いけれど、効果は絶大で強い、という光のことだ。

だから、答えは「存在する」

このように全く相反するコトが起きる面白さがライティングの妙だといえるだろう。

以下の作例写真を見ていただきたいが、これはライトを2灯使っている。
T0904_2492.JPG

FinePix S5 Pro

1/180秒 F19 ストロボ
ISO100

左後ろからのライト。これは強い光で写真全体のトーンを決め、露出を決定付けるライトである。
そして、商品であるカメラが黒く落ち込まないように、また、レンズの光沢感を出しているライトがもう1灯存在している。

これが、強くて弱いライトである。

実際のライティングの様子を見てみよう。


まずは、商品とカメラの位置関係。
カメラは上から俯瞰し、ディフューザーをすぐカメラ上から奥にむけて張っている。
右横に置いたディフューザーにはライトは入れず、単なるレフ板として置いてあるだけ。


裏側から見た状態。 光源はストロボ。

右のライト(カメラ側から見て左奥)がメイン光。
ディフューザーの素材はアートレーサー(通称アートレ)、
トレペと違って芯が出にくく、直打ちでも使いやすい。
カメラ側から見た時に床や商品にテカリの芯が来ないようにライト位置をやや外側に置き、大光量のパワーで入れている。

カメラ近くの上から入れている光が、今回のテーマになっている「強くて弱い光」
商品の黒いボディとレンズがテカる位置に置き、光源の芯を上手く捉えることで、
全体の光量には影響を与えない弱さでも、目的の効果は得られる充分な強さとなる。
確かこの時のパワーは
メイン光が1000〜1200Wクラスのパワーだったと思うが、
それに対して、この1灯のパワーは50〜100W程度。
1/10程度の弱さである。

そして今回のもう一つのテーマは、
白バックで黒いものを撮る時のコントロールの難しさ。
黒いものに合わせてライティングや露出を決めていくと、
当然ながら白い背景がぶっ飛び、ディティールを損ねてしまうからだ。

そもそも、なぜこのような難易度の高いシチュエーションになったかというと。

通常、黒いものは黒系など濃い色系のバックを使った方が高級感を演出しやすい。
ところが、同じページの商品が白系のバックで統一されており、
この商品だけが偶々黒かった、ということだった。

そういう理由でアートディテクター氏は白バックを提案して来たものの、
氏自身も「白バックで黒いものを撮る」という明暗差の激しい状況の難しさは承知してるのだ。

もし僕が、「白バックがぶっ飛びになってしまうからやめた方がいい」と提案すれば黒バックになったかもしれないが、

「ほー、それは難しいね。厳しいね。難易度高いよ。でも、面白そう。やってみるか。」

となり、チャレンジしたわけだ。
もし、上手くいかなければ露出違いの画像を後処理で合成ということも視野に入れておいたが、、

通常なら何灯も使い細かく分けてライティングを組み立てていく人も多いだろうが、
僕の場合、
大雑把に2灯だけ。
ただし、この2灯に与えられた役割が多いので、ものすごい微妙なコントロールをしている、といえる。

例えば左奥のメイン光は、1灯だけで

1.全体の光量を決定する。
2.商品の色を出す。
3.白バックのグラデーションと光沢感をコントロール
4.等々

といったことをしているので、ちょっとでも位置がずれてしまうと、
全てのバランスが崩れてしまう程の微妙さのうえに成り立っているのだ。

とにかく、明暗差の激しい素材の撮影は難しいので、一般的には避けた方が無難です。
ただ、たまにはこうしたチャレンジが職人魂に火をつけるというか、やってて面白いんです。

最後に、もう一つだけ書き添えておきたいのは、
この撮影で使ったFinePix S5 Proのこと。

作例写真は全く後処理をしていない画像です。

本番でRAW+JPG(S)で撮影した時のJPGデータをそのままアップしています。
クリックすると長辺2304ピクセルの元データが開きますので、
ダウンロードしてヒストグラムを確認してみてください。

これだけ難しい状況で、ここまで諧調を保持出来ていることに感心しました。

しかし、S5 Proも随分長いので、そろそろ次世代機が出ないかなぁ?
なんて思ったり、

他機種でも最近のカメラは諧調も優れているはずなのでしょうが、どうなんでしょう?

今回は長文になって読みにくかったかもしれませんが、
要点は、
1.強くて弱い光
2.白黒明暗差の激しい素材のライティング
3.FinePix S5 Proの実力

、、、でした。

 

「強くて弱い光」への1件のフィードバック

  1. お久しぶりです!
    やっぱりカメラのブレってあるんですね!
    僕もやはり1/50あたりでブレるんですよなので、あまりその秒数は、使わないようにしてます。
    またお邪魔します。

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